November 04, 2009

村上 春樹「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」

 村上 春樹「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」を読みました。二つの世界が並行して描かれ、それぞれ独特の緊張感が高まりクライマックスに収束していくところがぐぅでした(^-^)
世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド (単行本)
村上 春樹 (著)
新潮社
¥ 2,400(税別)
618

on 2009-11-04 00:12:09


世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈上〉 (新潮文庫)
村上 春樹 (著)
新潮社
¥ 620
397

on 2009-11-04 00:59:07


世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド〈下〉 (新潮文庫)
村上 春樹 (著)
新潮社
¥ 580
347

on 2009-11-04 01:00:13


 ハードボイルドワンダーランドの舞台は現代か近未来「東京」のパラレルワールド(?)。謎の“組織”と“計算士”、彼らから情報を解読して掠め取ろうとする“記号士”、地下に住み時々普通の人間を捕まえて食べるらしい“やみくろ”などが対立したり協力したり騙しあったりしている世界で、“計算士”の「私」はある特殊な計算の仕事を謎の老人から依頼される。その老人のいる地下の研究室に着くまではどこか不条理劇っぽい。案内役は老人の孫の17歳の娘。ピンクの服に身を包んだ太った、でも美しい娘は地下世界を隅まで知り尽くしていて、「私」を“やみくろ”が跳梁跋扈する非日常的な空間で導いていく。
 依頼された仕事は“洗いだし”と“シャフリング”の二つ。どちらも計算の仕事なのだが、“シャフリング”はかなり特殊な方法で“組織”からは使用が“凍結”されている。ところが依頼者の老人は“組織”とは太いパイプがあり、使用許可を既に取っていた。しかしその仕事こそ、「私」を窮地に追い込んでいく「ハードボイルド」な物語の序章だった...
 一方「世界の終り」は歴史と切り離された異世界が舞台。「僕」は一角獣が住み、壁で周囲を囲まれた“街”にやってくる。“街”の西には門があり、中に入るときに自分の“影”を引き剥がされてしまう。“影”はこの“街”の中には入れないのだ。
 中に入った「僕」はそこで“夢読み”の仕事を命じられる。それは夕方6時から図書館で古い一角獣の頭蓋骨に秘められた“古い夢”を読み出すという仕事で、そのためにわざわざ眼をナイフで刺して<しるし>をつけられ、昼間の強い光を見ることが出来ないようにされてしまう。
 夢読みを行う図書館には手伝いをする女の子がいた。女の子は「僕」に仕事やこの“街”のことを教え、コーヒーを出してくれる。そうして「僕」はこの“街”での生活を淡々と始める...

 二つの世界がそれぞれ「動」と「静」の対比を持って展開していき、それぞれの関連はすぐには見て取れませんでした。やがて「世界の終り」というキーワードが両者をゆるくつないでいることがわかってきますが、それはあくまで暗示されるだけで、人物たちが直接交わることはありません。
 しかしこの不思議な、不条理劇のような世界とファンタジーのような世界は非常に魅力的ですね。「世界の終り」はかつて見た「灰羽連盟」というアニメを思い出させます。時期的にはこの小説の方がはるかに先なので、アニメの方が影響を受けていたのかなとも思いますが、どこか似た雰囲気を共有していて、既視感を覚えました。「壁に囲まれた街」とか「制限された生活」とか、共通する要素は結構ありますね。
 物語はどちらの世界でも、それぞれ抗いがたい運命が主人公たちを捕らえて放さないことが明らかになっていくのですが、彼らは周囲の他者−老人の孫娘や図書館の司書、“夢読み”を手伝う女の子など−によって支えられ、自分の道を選び取っていきます。「ハードボイルド」な世界も「世界の終り」の世界も、静かだけど“意志”のある選択がなされ、かすかな希望のうちに幕を下ろします。いずれも心にしみるラストでした(^o^)

Posted by roku at 12:45 AM | from category: topics 本/Web読み物・雑誌/素材
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