November 11, 2008

佐藤亜紀「ミノタウロス」

 「バルタザールの遍歴」の佐藤亜紀さんの「ミノタウロス」を読みました。破滅的な物語と重厚な語り口でぐいぐい引き込まれてしまいました(^-^;)
ミノタウロス (単行本)
佐藤 亜紀 (著)
講談社
¥ 1,785 (税込)
277

on 2008-11-11 00:28:19


 舞台はロシア革命初期のウクライナ。田舎地主の次男坊ヴァシリは父が築き上げた農場で、父の共同経営者だったシチェルパートフの下、農場経営に才覚を見せるのだが、女達に手を出し、クラスメートを陥れ、表に出ない悪行を重ねていく。こういうとどうしようもない野郎みたい(というか実際どうしようもない野郎なの)だが、ヴァシリ自身は書斎の本を片端から読み、ドイツ語など外国語にも通じる賢さも持っている。でも大学に行って勉強しようという気はなく、シチェルパートフの仕事を手伝いながら世渡りを学んでいく方を選ぶ。(以下多少ネタバレ?)

 表向き順調だった農場での生活が崩れるきっかけとなったのがロシア革命...なのだが、この時期、革命軍と山賊・追いはぎなどのごろつきは、周りの状況しだいで風見鶏のように変わる札付き集団で、実際には簡単に色分けしにくかったらしい。そんな中、かつて怨みの種を蒔いてしまったごろつきに農場を襲撃され、それまでの豊かな生活から放り出される...いや、その前に大事な転換点−軍隊に出ていたヴァシリの兄の帰還がありました。戦場で受けた重い傷でかつての美貌を失った兄の姿は、父親の希望を打ち砕き、命を縮めてしまう。しかしこの兄、帰還後の存在感がすごい。負傷ゆえの醜さにもかかわらず、どこか神々しくさえ感じられる。だがその末路は悲しい。
 一方転落していくヴァシリは、放浪するうちに出会ったオーストリア軍の脱走兵ウルリッヒと浮浪児フェディコを交えて、ウクライナの荒野で衝動的に生きていく。かろうじて社会的なバランス感覚を残すフェティコの反対を押し切り、自分達のどうしようもない衝動に従うヴァシリとウルリッヒの二人を待つもの...もう大体見えてますよね(-o-;)

 文章が、どこか海外の古典小説(の翻訳)を思わせるような、不思議な硬質さと格調を感じました。
 描写されているのは殺人−虐殺、強姦、不倫、戦闘など、どうにも殺伐として不道徳きわまりない世界なのに、なぜか下品にはならない。個人的な感覚なのですが、大友克洋のマンガのようなドライでアナーキーなタッチと、大昔読んだドストエフスキーなどの海外文学の世界が同居しているようで、ちょっとやられました。
 なんだか佐藤亜紀作品にもはまりそうです(^o^)v
Posted by roku at 12:21 AM | from category: topics 本/Web読み物・雑誌/素材
Comments
No comments yet
このアイテムは閉鎖されました。このアイテムへのコメントの追加、投票はできません。
Trackbacks
Trackback URL