October 05, 2008

池上 永一「テンペスト」

 池上永一「テンペスト」読みました。確かに読み始めたら止められませんでした。結局二日で850ページ読み切り...あっというまでした(^-^;)
テンペスト 上 若夏の巻 (単行本)
池上 永一 (著)
角川グループパブリッシング
¥ 1,680 (税込)
426

on 2008-10-05 01:50:50


テンペスト 下 花風の巻 (単行本)
池上 永一 (著)
角川グループパブリッシング
¥ 1,680 (税込)
427

on 2008-10-05 01:52:06


 舞台は幕末の琉球王朝−中国清王朝を宗主国とし幕末日本の薩摩藩とも交流を持つ琉球王朝末期、竜の交尾する嵐の夜に生まれた女性−真鶴(孫寧温)の、男女の性、知性と感情、権力の頂点とどん底、生と死の間をジェットコースターのように行き来する数奇な人生を軸にした、まさにエンターテインメント!...なんとか括ろうとすると、こんな感じの謳い文句になるのですが、それだけでは収まりきれない冒険活劇ですね。古今東西の「お話」のエッセンスを詰め込んだ「お話の王様」って感じでしょうか(*^o^*)

 著者は「バガージマヌパナス ―わが島のはなし」とか「風車祭(カジマヤー)」とかすでに読んで、すっかり個人的なお気に入り作家になった池上永一さん。沖縄を舞台に現実と幻想の入り混じった、不思議と明るくて元気の出る小説を書かれていますが、今回はこれまで読んだ中でも最高に凝縮度の高い、本人曰く「150回のクライマックスがある」大長編です。今回はなるべくネタばれしないようにちょっとだけご紹介。
テンペスト | 池上永一

 主人公は、生まれてくる時、男の子を期待されていたのに女の子だったため父親から名前をつけてもらえず、自分で真鶴(まづる)と名乗ることにした少女。生まれつき知識欲旺盛で、好奇心のままに知識を吸収しまくる彼女はしかし、世の中では女性が大手を振って勉強し、それを仕事に生かすことが許されないことを知っていく。そんな中、真鶴は中国の科挙のような琉球王国の官吏登用試験「科試」を知り、父から強制される試験勉強に耐えられず逃げ出した兄の替わりに受験することになる。本来女性は受けられない科試を受験するため、彼女は「宦官」を装い、父がかつて息子につけようとしていた「孫寧温」という男名を名乗ることに。そして、受験準備のため私塾に入ったり模試を受けたりする中で、天才の誉れ高い喜舎場朝薫という、ライバルであり、やがて畏友ともなる少年と出会う。

 ここからすでにワクワクさせられます。知性では互いに譲らない二人のぶつかり合いと、相手に対する尊敬や公正な態度の描写には、騎士道的/あるいは武士道的なすがすがしささえ漂います。そして、宦官とはいえ男のはずの寧温に対して、何故か惹かれてしまう朝薫の心。本能的には女性であることを感じていたのですね(^^;)...でも「理性の人」である朝薫は寧温の真の姿を見ることを無意識に拒み、表の姿−宦官として受け入れようとします。

 とまあ、こんな調子で続けていくといくらでも長くなってしまいますので、ここらで止めます(^-^;)

 この大「大河ドラマ」の面白さは、同僚となる朝薫や琉球の尚泰王、美貌の兄嗣勇、大奥で権力を振るう聞得大君、大奥を仕切る女官大勢頭部、見習い女官の恩戸、薩摩藩から琉球に駐在に来ている武士・朝倉雅博、女性としての真鶴の親友となる真美那など、真鶴以外の登場人物たちの破天荒なまでの「キャラ立ち」にもよっています。ある時は友や協力者であっても、時が変われば迫害者になる展開があったり、かつては強大な敵であった人物が最後には共に立つ人となったり、とにかく場面設定と展開の妙がすごいです。個人的には真美那が大好きです。この子はすばらしい!とんでもないことを何かやらかしてくれる一方、真鶴に対する友情と誠意には思わずほろりとさせられ、尊敬してしまいます(*^o^*)
 個人的な戦いだけでなく、幕末日本を狙うアメリカや列強諸国の支配の手を、口先一つですり抜け、琉球王国を存続させようとする真鶴たちの歴史的な戦いもまた読み応え十分!真鶴(孫寧温)の外交手腕にはペリー提督も真っ青で、今の日本の外交でこのしたたかさが発揮出来たらなぁと思ってしまいます(^-^)v
 一時はどん底まで落とされる真鶴ですが、その行く末はいかに?...正直、最後は思わず泣けてしまいました。しかも温かい涙で(T-T)

 これはもう今年一番の小説ですね。というか、これまで読んだ中でも最高に面白かった小説の一つです。読んでいてワクワクし、元気が出て来る−「人間」ってこういうもんだな、こういう風にありたいな、という気持ちが起きてきます。そんな素敵な物語に乾杯!!(^o^)/▽

Posted by roku at 12:10 AM | from category: topics 本/Web読み物・雑誌/素材
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